extra II
REVIEW


【ARTIST REVIEW (1991.1993.)】

■バクテリアはバンドというよりもヴォーカリストであり、パフォーマーでもあるカワグチのソロ・プロジェクト
である。カワグチのコンセプトに合わせてメンバーは流動的に組まれる。ライブは毎回、その時々のコンセプトに
合わせてスタイルを変えていく。また、ヴィジュアル面も凝っていて、舞踏家との共演、モニターや舞台美術など、
完全にある一つの世界を創出しようとする意図が見える。バクテリアはブリープ・ハウスといえばわかりやすいの
だろうか。808ステイトをもっとノイジーに、ケオティックにしたものである。カワグチはそれに合わせてラップ
をとり、あるいは踊り続ける。舞踏家でもあるカワグチのパフォーマンスはいわゆるハウス・シーンからみると異
形ではあるが、それがかえって彼の存在を際立たせている。【PUMP / 1991】

■ライブ・ハウスからクラブ・シーンまで精力的に出没して最近急激に実力、動員力、知名度を拡大しているバク
テリアのファースト・アルバムが「SIM HOUSE」 以降まったくリリースのなかったSSE2000番台からいきなり登
場する。リーダーのカワグチトヨキ (Vo) の才能とセンスがみせる強烈な現在性はいわゆるミクスチャーやハード
コアハウスといったジャンル分けの不毛さを軽くとび越えて光りまくっているばかりか、洋楽マニア面でこの種の
音楽に関わっている猿のようなミュージシャンや音楽ファンに深刻なダメージを与えるに違いないとさえ思えてし
まう。若さからほとばしるエネルギーと知能犯的な戦略性を武器に、バクテリアは今後予想もつかない展開をみせ
るはずである。【MEDIAGALAX・FOOLS MATE / 1993】


【DISC REVIEW (1993.1994.1997.1998.2017.)】

<SEASON OF DISEASE>

■ロック・サウンドのハイテンションをキープしつつ、サイバーなクラブミュージックと創造的に合体することは
可能なのかという一大テーマをめぐって格闘している若手ミュージシャンが続々と名乗りを挙げる時代に入った。
バクテリアの試みは、そうした地下サーキットを疾走して、次代のメイン・ムーヴメントへと大きく貫通する大き
な流れの、最も先鋭的なイディオムを投企する。【北村昌士氏・SSE RELEASE INFO. / 1993】

■一言で形容するならば“ハード・ノイズ・コア・ハウス・ジャンク・スタイルの決定版”とでも言えるだろう?
バクテリアのコレが初のミニアルバム。正にジャンクが持っているデットテックな感覚をベースに、ハウス的アレ
ンジで統一されたトータルな内容となっている。特筆すべきは、自らの音楽を“肉体浄化のダンス・ミュージック”
と公言しているリーダーのカワグチの喉から発せられる言葉達(ノイズ=存在)。英語というよりむしろ無国籍で
グローバルな響きが本作品のキーワードとなっている。余談だが、最後の曲はジャズグルーブに溢れた異色作で注
目曲! 【FOOL'S MATE / 1993】

■もとより「編集」の人であった北村昌士が、安価になったサンプリングテクノロジーに関心を寄せぬはずもなく、
このSSEでも自作他作問わずそれを駆使した作品を数多く手掛けているが、これはその一例である。フレーズの借
用が今ほど厳しく取り立てられなかった牧歌的なこの時代ではあるが、使用サンプルリストを記した挑戦的な本作
は、そんお内容も攻撃的であり、アッパーなダンスビートとディストーションギターを組み合わせたデジタルロッ
クでぐいぐい攻めるが、アコギおよびサックスのソロをフューチュアした最終トラックが出色の出来を示している。
 【SEASON IN THE DAWN / 2017】


<CELL DIVISION>

■名は体を表すというが、ジャンル無視というよりも、まさにジャンル分裂・アプローチ増殖といった感じのバク
テリアの2ndにして初のフル・アルバム。 ハウス以降に一般的な打ち込みミクスチャーの方法論を彼らもとってい
るが、突発的なサウンド変化よりも単体ではバラバラに思える各チューンのつなぎ方のセンスがまず魅力だ。リー
ダーのカワグチは元々ソロ・ノイズ・ギタリストだったようだが、やたらにグルーヴを口にする輩とは違って、意
外にケレン味のない抑制されたクールさがアルバム全体に一貫しているのは、そうした出自によるからかもしれな
い。【石井孝浩氏・FOOL'S MATE / 1994】

■バクテリアの約一年振りとなる2ndCDの登場。今回はズバリ“肉体”を軸にしたサウンドが展開されるハウスサ
ウンドとなっている。 Vo、G、に至るまで全てのパートがリズムを奏で、その結果とてつもないうねりが聴き手を
飲み込んでいく。カワグチのギター・ワークは絶品。【ORIGINAL CONFIDENCE / 1994】

■バクテリアの約一年振りの2ndアルバム。 いわゆるハウスとは一線を画す、非常にロック的な印象を受ける。グ
ルーヴ感溢れるリズムがボトムを支え、ウルトラ・ノイズ・ギターが頭を直撃する。打ち込みと生演奏を見事に融
合させた、繊細にしてダイナミックなサウンドは、ハードコア・テクノを百倍くらいアグレッシヴにした感じで凄
い。COKEHEADのKAZUKI氏が参加した曲もグレイトだ。【豊島佳晃氏・DOLL /1994】

■This CD occupies a nebulous area somewhere between hard rock, prog rock, and punk. A song might start off in
a slow, melodic way then suddenly change into a noisy punk break before becoming a HELMET-like rhythmic heavy
rock peace . Another one veers between base-led rhythmic passeges and noisy, chaotic measures with metal
percussion and great weired samples. It's almost reminiscent of COP SHOOT COP. "ClimeMusik" is unexpectedly
mellow , and I can't say I care for it. Thankfully, "Orange Sunshine" gets back into theheavy rhythm, razor guitar
and odd noises . Something like old New Wave updated to feel more contemporary. "Garden" is unfotunately sliker
and less interesting, with uptempo guitar sound that feel flat. At timesthis reminds me of fellow Japanese-based
rockers ZOA, back in the mid-80s. It may not be groundbreaking, but it often rocks and sometimes that's enough.
Depends on your taste.【Ongaku Otaku / 1997】

■トランスの流れを汲むSSEは、 90年代以降に登場したもっとも個性的かつ質の高いレーベルだが、 これなどは
いかにもSSEらしい一作。ZOA や ASYLUMの流れをくむノイジーでラウドなギター・サウンドにトリッキーなサン
プラーがヒットし、スピード感のある重いリズムが加速して、スリリングでカオティックな音世界を作り出してい
る。ヘヴィ一辺倒ではなくアコースティック・ギターをフューチャーして軽いサイケデリック感覚を打ち出したよ
うな曲もあり、音楽的振幅も感じられる。不安とオブセッションが束になって押し寄せてくるような感覚は衝撃的
であり、かつすぐれて現代的だ。【小野島大氏・NU SENSATION / 1998】


【LIVE REVIEW (1993. 1995. 1996. 2000.)】

1993.8.4. LIVE at 20000V. koenji.
 ( guest:THE GEROGERIGEGEGE.)
■子供の無邪気さほど罪深いものはない。彼らはその無邪気さを武器にして、俗世間から身を守っているように思
う。いつもキレイでいるために。意識してのことなのか、無意識なのか、時に大人を傷つける。
もしかしたら、バクテリアにも子供のそれと同じ作用があるのかもしれない。彼らを形容するコトバのすべてが無
意味なものになってしまうくらいの素直な音。その素直さゆえに子供っぽく見えるのかもしれない。しかし、それ
が余計に他人の気を引き、もう目を離すことは出来ない。それこそカッコヨク見せようとか、いろいろ小細工する
よりも、子供っぽさが引き起こす進化するカッコヨサのほうがステキだからだろう。「子供っぽさ」というのは、
きっと本物の子供とは違うというところに意味があり、意識したときにはなくなってしまう。そして、そのむずか
しい位置にバクテリアはいる。とってもウソっぽい位置。その場所へ行くには、バクテリアのライブに行けばいい。
必ず連れて行ってくれる。しかし、甘く見てると帰れなくなる。帰れなくなってみるのはステキなことだと思う。
彼らのカッコヨサには、それくらいの価値はあるからね。自分に起こる現実は、避けることはできない。
この日のライブも、その場所から帰れなくなった少年・少女が踊り狂っていた。理解者であり、あるときはそのウソっ
ぽさを見破る彼らは、そんなバクテリアに何かを感じ、何かを求めているようだ。そして、バクテリアは次に何を
見せてくれるのだろう。素直な子供っぽさが、そのヤバさを暗示している。【諏訪美枝氏・FOOLS MATE / 1993】

1995.2.25. LIVE at SHELTER. shimokitazawa.
 ( with OFF MASK 00. HOT TOASTERS. COAL-TAR.)
■前略)このバンドも基本は3ピースなんだがライヴではマニピュレーターも参加の打ち込み導入スタイル。最近
私の周りではバクテリアは賛否両論飛びかっていたけれど、はっきり言ってこの日一番良かった。なにしろスリリ
ング!ウルトラ・ノイジー・ギターとブンブンのベースとタイトなドラムが出す音は爆音の上にまた爆音、スピー
ドの上にまたスピードでガンガン攻めて来る。サンプリングの音とも上手く絡み合い、いくつもの渦を作っている
ように聞こえた。フロントである2人のキャラクターもカッコよくきまっており(バンドはこれが大事!)、照明も
回転灯を使うなどの発想が文句なくハマッていた。とにかく私にとって本当にグッと来たのです。(後略 
【清水利晃氏・DOLL / 1995】

1996.11.26. LIVE at LOFT. shinjuku.
 ( with NUKEY PIKES. PIGMEN(FUNHOUSE). BRUTISH BULLDOGS.)
■この4バンドが一緒にライブをやってしまうこと自体凄いと思うのは私の思い込みが強いせいなのだろうか?と
にかく凄い。アドレナリン大放出になりそうになる。観る前からドキドキでウキウキでパーになりそうな程の極度
の緊張感、たまりません。(中略)もうノイズの洪水!キー、ガー、ゴー、ギュー、ビー、ノイズだよノイズ!嫌
いな人は絶対拒絶反応を起こして、その場に10秒といられないのだろうけれど、ノイズの世界はハマったら最後、
歯医者のあの機械音にうっとりしてしまう人までいる。最初から最後まで飛ばしまくりのバクテリアでこの日のラ
イブは終了。・・・、筆舌にし難いライブだった・・・。【M GAZETTE / 1996】

2000.1.3. LIVE at 20000V. koenji.
 ( with KIRIMANJARO(KIRIHITO+U.G.MAN). ONOFF. etc.)
■個性的で素敵なバンドが集結する20000V。 2000年の幕開け一発目は、キリヒト+謎のボーカリストによるス
ペシャルバンドが目玉の、お正月恒例企画。(中略)続いてはガラッと雰囲気が変わり、バクテリアの登場。小気
味よいリズム隊の疾走感に、自然と体も動く。キャリアの長さが物語るように、海外バンドの真似っ子には成り下
がらない良い意味での国内産パンク・ロック!(後略 【野口香氏・INDIES MAGAZINE / 2000】